恋人が猫になりました(幸白編)

図書室で借りてきた黒魔術の本を遊び半分で試してみたら。なんと、白石が猫になってしまった。真っ白な毛色に焦げ茶色の瞳、そしてスレンダーな体躯。白石の特徴に、バッチリ当て嵌る。わぁ。猫化の黒魔術、成功しちゃった。流石俺。

困惑した表情で、適当に書かれた魔法陣の上にちょこんと座る白石。元の姿が整っていると、猫になってもそれは変わらないらしい。物凄い美人猫だ。
「可愛い!」
「にゃあっ!?」
抱き上げて、小さな顔にすりすりと頬ずりをする。毛並みがサラサラで、とても気持ちがいい。
「可愛い可愛い可愛い可愛い!!」
「にゃああああ」
小さくてフワフワしてて、暖かくて柔らかい。俺の腕にすっぽり収まる丁度良いサイズで、抱き心地も最高!
「白石、可愛い!」
「にゃ、」
「声も可愛い。もっと聞きたい、もっと鳴いて?」
「・・・。」

無言になった白石が、小さな前足で俺の頬をペチリと叩く。これは平手打ち?になるのかな。でも全然痛くないし、当たった肉球がプニプニしててむしろ最高!そしてジト目でこっちを見てるのが可愛い!!きっと猫にされた怒りを、精一杯露にしてるんだろうけど、可愛過ぎて全然怖くない。
「白石。ねぇ、どうしてそんなに可愛いの?」
俺、そこまで猫好きなわけじゃないんだけど。
「大好きだよ。」
額に唇を落とすと、咎めるような声音でにゃあと鳴かれた。うん、怒ってる怒ってる。
「ふふ、ヒゲがピクピク動いてる。」

先の方を人差し指でつついたら、白石は勢い良く顔を逸らした。おお、今度はビックリした顔してる。へぇ、猫としての機能はあるんだ。もっと観察したいけど、白石が本格的に怒ってしまった。ボコボコと前足で胸を叩かれて、流石に痛い。
「ごめんごめん。ちゃんと元に戻る方法は探すから。」
「んにゃっ!」
「機嫌直してよ。」

きっと借りてきた本の中に、元に戻る方法は書いてあるだろう。でも、まだこのままにしておこうか。可愛いもん。鳴き声もまだまだ聞きたいし。いっそ外に出てみようかな。今なら公共の面前で白石を抱っこしたって、誰にも咎められないよ。
「よしよし。」

元に戻る方法は後で試そう。あぁ、白石可愛い可愛い。モフモフと撫でるのを再開した俺を見て、白石は呆れてため息を吐いた。

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