白石に壁ドンしてみた。by幸村

赤也が騒いでいたんだけど、最近壁ドンっていうのが流行っているらしいね。なんでも、壁に手をついて自分と壁の間に相手を閉じ込めるんだとか。それでその壁ドンっていうのを、この間誰かに入れ知恵をされたんだろう白石にやられたんだけど。いやぁ、面白かったなぁ。結果としては、仕掛けてきた白石を俺が返り討ちにして主導権をモノにしたからいいんだけど、先手を打たれたのがちょっと悔しかった。
「だから今度は俺から仕掛けてみた。」

手をついて壁に白石を押し付けて、ニコニコしながらそう告げると、白石は困った様子でこちらを見てきた。さぁ、どうするかな?俺みたいに攻め返してみる?でもそれじゃあ何の面白味も無いし、されたとしても俺は簡単に形成を逆転させる自信がある。それに、何かと個性を出すのが好きな四天宝寺出身の君の事だから、被った答えを出すなんて無意識に選択肢から外すだろう。
「頑張って考えて。」

顔を近付けて、そう囁いて。困っている白石の顔をまじまじと見つめながら反撃を待つ。この間の白石は俺にされるがままになっていたけど、今回は俺からはアクションを起こさずに様子を見てみる事にした。赤也から聞いた壁ドンの対処法は、最悪相手を殴って距離を取る事らしいけど、優しい白石はそんな事はしないだろう。俺の遠慮のない視線に晒されて、白石の頬が徐々に赤くなる。うん、可愛い。至近距離で観察出来る、この位置は正にベストポジション。壁ドンって楽しいなぁ。なんて思っていたら、白石の顔が目の前から消えた。続いて全身に感じる温い体温。
「えっ・・・?」

白石が俺の胸に飛び込んでくるなんて全然予想していなかった。驚く俺の背中に腕を回して、恥ずかしいのか白石は目も合わせずに一言。
「考えたんやけど。・・・・・・これしか思い付かへんかった。」
・・・なにそれ。アクションとしては、ただ抱き着いただけなんだけど。本当にただそれだけなんだけど。だけどすごいキュンとした。

破壊力抜群の反撃を喰らって、さっきまでの余裕なんて吹き飛ばされた俺は「この間のお返しや」という台詞と共に下りてきた白石の唇を、大人しく受け入れる他なかった。

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